パリまで30年

フランスになどいったことないのに、またそれほど興味があったわけでもないのに、なぜかパリに行った夢を見ました。夢の中のパリは、それはもうすべてが美しくて、すべてがアーティスティックで、人もやさしくて、思い描いていたパリそのままだった。でもパリを思い描いていたわたしそのものも夢の中で33年生きた人だった。
泊まった宿は四角形のとても天井の高い建物で、中には階段しかないのです。一階にフロントがあるだけでそこから上を見上げると四角形のらせん階段(?名称を知らずすみません)が上のほうまで伸びている。階段の踊り場にぽこっと奥まったスペースが作ってあり、宿泊者はそこにふとんを敷いて寝るのです。畳3畳ほどのスペースです。ドアもないです。どうやらバックパッカーが泊まるような宿に来てしまったらしい。ホテルの案内係に連れられ、階段を昇るたびにどこの国から来たかもわからない宿泊者になんとなく挨拶をして、そういえばお金もないのに子供を連れてきていたから、大丈夫かなと少し不安に思っていたらわたしたちは比較的広い部屋に通された。でもやはりドアはなかった。上を見上げるとまだまだどこまでも上階が続いており、くねくねと歪んでいた。それでも本当に昔ながらの伝統的な建物で、木とレンガでできたような(それも本当にそこの伝統かどうか知らないんだけど)、くすんだクリームがかった緑の壁をした、自分が大好きな感じの宿だったので、とても満足していた。
そのあと殺人事件のような怪事件もあったような気がする。いかにもフランソワオゾンの世界のように。ドアがないからだよ、と思った。それで、いかにもフランソワオゾンの世界は別にいいやぁと思い子供とホテルの外に出て、どっか買い物に出たんよね。かわいい!!と思ったことだけ覚えてるけど、何がどうだったか覚えてない。イケてない地下街のようなところで(福岡なら昔のファーボのような)刺繍の素敵なハンカチを見つけて、なんか針仕事がパリって感じ!と感動して、クリスティーナローデのショップを見つけて、きゃあきゃあ言いながら買い物して、コロッケ屋のおじさんがにっこりしてコロッケをおまけしてくれた。コロッケ屋のおやじがやさしいのは世界共通やなあと思いながらホテルへ帰ったのだった。現実世界ではクリスティーナローデはデンマークのお洋服で、コロッケは、パリにあるんですかね。本当のところは知らない。そして今考えたらあの刺繍のハンカチはチェコとかハンガリーとかの東欧デザインのものだったと思う。

つまり、何一つ、パリじゃなかった。

何一つパリじゃなかったかどうかもわからない。何一つ知らんからね…。
今行きたい国はやっぱりアメリカだけど、フランスはおばあちゃんになったら行きたいです。スイスとかも。
そしてゆっくり椅子に座ってゆっくりお茶を飲んでゆっくり目線を移すようなそんな旅がしたい。

現在の天井