君の中で俺は

夢の中で「そうだったよね、君の中で俺はこうこうこんな人だったよね、ごめんね」と言われ、アイドル気取りかよって思った。
今までコンスタントに私の夢に出てきては悲しい思いをさせたり期待通りの発言をしたり、その人は、私の中で悲劇も喜劇も含めて私の描くその人そのものだった。裏切りもロマンスも全部こなせるしなんなら背徳感さえ抱かせた。なぜならそれは記憶のアップデートがおこなわれないからで、その間は無意識のうちにおそらくこうであろうという人物像を作り上げ、凝り固まらせてしまうからである。そんでそれが今朝突然夢の中でブレたんである。そんでキャラブレてごめーん、て謝られたんである。
なんで自分で作り上げたキャラにキャラを裏切られ謝られないかんのか、しかも夢の中なのに。
でも、人に言えんけど、なぜか、なぜか、なんでか、それはたいそう耽美で。「君の中で俺は」ってセリフ、そんで君の描く人物でなくてごめん、て謝られたこと、悲しくて泣いて、つらくて甘かった。
女の中にはなんとなくいつも君の中の俺、私の中のあなた、彼女の中の彼というのがあって、私の中のあなたの中にある君の中の俺が、きっと私になんらかの理想を抱いているだろうと思うから、ついついその理想どおりに動いてしまう。それが彼女のやさしさで。しかし必ずしもそのやさしさが的を得ているわけでないことも知っている。でもなんとなく勝手にやさしくしたいのだ。それが彼女のわがままで。俺の中の君、なんである。本当は俺の中の君なんてのはないけど、私の中の俺の中の君、なんである。なんである。

なんである。
なんである!