父が弱ってる。母も弱ってる。帰省するたび、あんたには本当に迷惑かけたねと謝るようになった。昔、小学校低学年のころ、引っ越す前の家に遊びにいったとき、隣の家の友達のお母さんに露骨に嫌な顔されたことを思い出した。戦争が終わって負けて帰ってきて、家がなくて、親父もお袋も隣の家のあのおじいちゃんにたいそう世話になったんだと。でもあそこの嫁さんはさ、と私は、それをなんとなくただの昔話として話してしまった。父と母の長く続いたいざこざを責めるつもりはなかった。配慮が足りなかったな。
私が近くにいなければ、この家どうなるんだろう、この二人どうなるんだろう、私は、私の帰る場所は。

きょうは終戦記念日か。じいちゃんが「俺はアメリカに爆弾を落とすまで死なんぞ」と言ってたのを思い出す。