酒を飲みたかったんじゃない

意識の半分くらいをまともじゃない世界か相当にまともな世界に乗っ取られているから思考回路の半分は嘘なんだけど、でもお母さんが言ってた、「人間やっぱりみな平等やね、いくら考え方やライフスタイルがはっきりしてても自分の進みたい道だけを進むことはできんね、避けて通った道は必ずどこかで通るようになってる。私、若い頃はしょうもない人付き合いとか、何かのコミュニティに属するのとか大嫌いで、それを避けることばかり考えてたけど、考えれば考えるほど、やっぱりそれを避けて通ることはできなかった」と。今は人に料理を教えたり人から料理を学んだりして自分の好きなことばかりする生活を送っているけどあなたは最近どうかと聞かれ、私が答えたのは「ごみとカラスの問題に夢中」ということだけで、それに対する答えが「人間みな平等」なのであった。彼女が目を輝かせて赤や黄色の良い匂いのするクリエイティブな食べ物を作ることや学ぶこと教えることに生きがいを感じている一方、私は目を光らせながらその時間が経過して腐って灰色になったクリエイティブな残骸をいかに黒く卑しい生き物から守るかに生きがいを感じていた。そして、あんたももう少ししたらやりたいことやれるやん、と。ああそうか、私何かやりたいことあったよね。東京はなんでもあるって言ってたよね。でも私のやりたいこと…私のやりたいことって、なんですっけ。確か何かあったんですけど、上の子が少しずつ成長するたびにもうちょっと、もうちょっとと思いながら、下の子が生まれてまとめて子育てしてるうちになんだかすべて忘れてしまいました。私何したかったの?こんな時間を過ごすのも平等なの?
きょうハイリにチリに行くときアメリカ経由するよね、アメリカ降りたらどこ行きたい?って聞いたら、私はとりあえずメトロポリタンミュージアムかなって言ってた。私もメトロポリタンって言いたかったよ。そんなことすら忘れてる。