紅茶


ケーキの準備だけをして、子どもたちは寝てしまった。

なんていうか、形はどうであれ、記録するっていいことよね、たぶん。くだらない事柄でも、くそったれた夢もすべて記録しなきゃね。
それで、独り身のわたしは奥さんと子どものいる人と不倫してて、離婚してくれるって言ったから、アホみたいに小躍りして喜んでて、ふとキッチンのほうを見るとストッカーには高そうな紅茶の缶があって、「今、奥さんと子どもは?」と聞くと「下の公園で遊んでる」と言うので、窓から下の公園を見ると、痩せた女が子ども二人と遊んでいた。痩せてるだけじゃん、夫のことすべてわかったような顔して、黒いパーカーとか着て、ヤンキーかよ、と思った。しかしそれをよく見ると、それは自分だった。なんだか急に腹が立ってきて、この最低野郎、腐った紅茶野郎って思って、離婚って言葉を聞けたからもういいですって言って、帰った。バーカバーカって思った。離婚って言葉がこんなに自分を幸せにするなんて、まるで結婚しようと言われたかのごとく、わたしは幸せでバラ色で超ハッピーだったけど、それはそれはとてもみじめで、結婚生活も子育ても人付き合いも、すべてわかったような顔をして砂場で子どもと遊んでいたわたしも心底気持ち悪かったけど、やっぱりそれは非の打ち所がないくらい、幸せだった。
バーカバーカ。